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横浜市 障害児通所支援事業所「ハミングバード荏田西」療育ガーデン

蝶の集まる庭で療育支援

障害児通所支援事業所とは、障害のある児童や発達に心配がある児童に、療育を提供する事業所です。2020年秋、横浜市に指定された新たな障害児通所支援事業所が、青葉区に開設されました。この施設のオープンに向けて、Q-GARDENがガーデンデザインと施工を行いました。

横浜市の障害児通所支援事業のうちの一つである「放課後等デイサービス」では、学校授業終了後または休業日に、生活能力の向上のために必要な支援や余暇の提供などを個別支援計画に基づき提供します。学校教育法に規定する学校(幼稚園、大学を除く)に就学している障害児が対象です。今回の新しい事業所「放課後等デイサービス ハミングバード荏田西」でも、知的障害、精神障害、身体障害を持った、主に小学校・中学校・高校に通うお子さんが対象になります。平日は学校の放課後、休日は10時頃から15時半までをこの事業所で過ごすことになります。こちらでの支援プログラムの特徴は、「一人ひとりが自分の中にある本質(長所・美しさ・強み)に気付き、意識的に使う事ができる」を目的とした療育を行うことだそうです。

本支援事業所は、戸建の並ぶ住宅街の中の一戸建ての物件を借り上げたもので、個人邸の庭に近いデザイン施工になります。敷地面積が232㎡あり、南西向きに広い庭スペースを保有しています。施設長は、ここに障害のある子どもたちが室内と同じように療育できるようなナチュラルなお庭を作りたいという熱心な思いをお持ちでした。開所日まで期間短く予算がかなり限られていたため、早速、デザイン設計に伴う必要最低限の資材探しに取り掛かかります。

明るい印象のフェンス

当初、庭周りの三方は、正面に低いフェンスがあるのみの開放的なつくりでした。立地が住宅街のため、高いフェンスが必要です。両隣の住宅と庭の正面にある一般駐車場に、子供たちの遊ぶボールなどが飛んでいかないようにしなければなりません。高さ2メートル程のフェンスを、庭の前方サイドと左方サイドの2か所に施工。木の柱とプラスチック樹脂のベージュ色の角目ネットを選び、高さはあるものの明るい印象のフェンスに仕上がりました。

庭周りの残りの右方サイドは、フェンスを建てない代わりに農業用アーチを建て、子供たちがそこをくぐって遊べるように工夫しました。

療育に役立つガーデン

ガーデン自体は、奥行6メートル程のわりと広いスペースがあります。室内と同じように子供たちが楽しめるようにというご要望を受けて、地面には針葉樹皮のマルチング材を敷きつめ、周りにお花などを育てられるよう大きな木枠花壇をいくつか配置したデザインを考案しました。
支援事業所の庭を“蝶が集まる場所”にもしたいという自然なお庭や昆虫を好む施設長の願いもあり、リビング正面の2つの花壇には、蝶が好むような植物を中心にセレクトした苗を植栽。たとえば、キンカン、フェンネル、ルー、アガスタ―シェ、ランタナ、ノコギリソウ、スミレなど。全体的にピンクや紫系の優しい色合いの花の色に統一しました。そのほか、3か所に大小の菜園を施工しました。もともと良い土壌だったため、少し黒土を足した程度でした。

とくに療育に役立つと思われるのが、先ほどの高いフェンスに沿った地面に奥行30センチの細長いフリー花壇を施工したことです。将来的にそこを人数分に区画し、それぞれを一人の子どもが担当するという計画です。各自が好きなものを植えて育てることで、自分の好きなことを見つける、命の温かさを感じる、といった本事業所がめざす療育を実践することができます。

今回のガーデンデザインで採用したフェンスやプランターなどの素材や施工方法は、いずれも現状復帰が可能です。賃貸物件においては、現状復帰を考慮したデザイン構成をプランすることも重要なポイントです。

毎日、施設長と一緒に2匹の犬がセラピードッグとしてここに通ってくるそうです。リビングの前には、子供たちと犬とが触れ合えるようなウッドデッキもつくりました。

今回初めて障害児通所支援事業所のガーデンデザインに関わらせて頂きました。多様性に配慮した教育に役立つという意味で、商業施設や個人邸などとはまた違った達成感があります。同じような施設でのお庭のご相談がごさいましたら是非ご連絡をお待ちしています。

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